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各技法について

各技法について

自己効力という概念が各技法とどう結びつくか事例をもとに考えていきましょう。

事例 1

Kさんは、 食事指導に対しては
「はい、わかりました」と小さな声で返事をし、
「そんな大きな目標、私には無理ですよ。すみません、いつもできなくて。でも、どこが悪いんだろう」
と申し訳なさそうに平謝り。

「そんなに大きな目標、私には無理ですよ。」

……高い目標への実行不能感

「すみません、いつもできなくて。でもどこが悪いんだろう。」

……自分の変化に気づいていない。自分の行動のどこに問題があるかわかっていない。

ステップ・バイ・ステップ法

「そんなに大きな目標、私には無理ですよ。」

高い目標への実行不能感を抱いているKさんに対して、医療スタッフはステップ・バイ・ステップ法の導入を計画します。
ステップ・バイ・ステップ法は、一度にハイレベルな目標を達成するのではなく、小目標をたてて段階を追って実施していく方法です。少しずつ成功体験を積み重ねることで自己効力が高められると言われています。

セルフ・モニタリング法

「すみません、いつもできなくて。でもどこが悪いんだろう。」

さらに、Kさんは、自分の状況を客観的に判断できていないことから、セルフ・モニタリング法の導入を計画します。
セルフ・モニタリング法は、達成しようとする目標に向かっている途中の、自分の行動や体調、気持ちの変化を観察、記述する方法です。望ましい行動によって良い結果になることを客観的に理解することが、自己効力感を高めることにつながります。
セルフ・モニタリング法では、次の2点を設定します。
(1)具体的な達成目標と行動目標
(2)身体面、認知面、感情面などの広範囲な観察項目
観察項目では患者様が目標を達成するまでの葛藤なども理解できるようにすることが必要です。記述の際には“最も満足しているのを10とすると、今日の満足度はいくつか”というように、観察項目は測定可能なものとして作成します。

【Kさんの目標】

達成目標:体重増加を最高でもドライウエイトの7%に抑える。
行動目標:氷を食べるのは、一日20個までに減らす。

Kさんの場合、まずはステップ・バイ・ステップ法で体重増加を7%に抑えることができたという成功体験を確認し、またセルフモニタリング法によって体調および気持ちの変化の確認を行うことで自己効力感を高めることができました。

事例 2

Nさんは、水分管理ができず、
「いやぁ、飲みに行くのは止められないんだよ。看護師さんは飲むなって簡単に言うけど、本人にしてみれば大変なんだよ。
誰も我慢なんかできやしないよ。みんな水分管理をどうやってるんだ!
」と開き直ります。
さらに看護師に注意されると「水分管理なんてやったところでどうなるんだ!
」と激怒し、「早く死んだっていいんだよ!
」という言葉も聞かれました。

「誰も我慢なんかできやしないよ。みんな水分管理をどうやっているんだ!」

……他の患者様の水分管理に関心を示す

「水分管理なんてやったところでどうなるんだ!」

……水分管理を行うことにメリットを感じていない

「早く死んだっていいんだよ!」

……生きがいを見失い、投げやりな感情を抱いている

ピア・ラーニング法

「誰も我慢なんかできやしないよ。みんな水分管理をどうやっているんだ!」

他の患者様の水分管理に対しての関心がうかがえることから、医療スタッフはまず、ピア・ラーニング法を用いた自己効力感の向上に取り組むことを計画します。
ピア・ラーニング法には、自分と同じような立場で、自分と同じような行動変容の目標をもつ患者様から学ぶことにより“自分もできるのではないか”という自己効力感を高める効果があります。

ピア(peer)= 仲間・同輩

Nさん
「あれ?…みんながんばってるんだ。
努力していないのは俺だけだったのか。水分管理、俺でもできるのかもしれないな。」

行動強化法

「水分管理なんてやったところでどうなるんだ!」

さらに、水分管理を行うことにメリットを感じていないことがうかがえるため、行動強化法の導入を計画します。行動強化法は、ある行動の直後に自分にとって好ましいことが起きると、同じ行動を繰り返し行うよう条件付けられるという行動療法の考え方に基づいています。
患者様が水分管理などの目標となる行動を行って、うまくいった場合に自分に対する報酬(プレゼント)などが繰り返し得られると、次の行動目標が達成されやすくなり、そのことが行動を習慣化させることにつながります。

Nさんは“水分管理がうまくいった週には、自宅で趣味のカラオケをおもいきり歌う”というプレゼントを定め、歌うことを楽しみにしながら水分管理に取り組むようになりました。

生きがい連結法

「早く死んだっていいんだよ!」

Nさん場合、自分の経営する工場で働く25歳の息子さんがおり、まだ半人前だと考えてはいるものの、将来は工場を継いでもらいたいと考えていることがわかりました。
看護師‥「“息子さんが一人前になったら工場を継いでもらう”ことと“体重を増やさずに安定した透析を行う”ことはどのようにつながりますか?」
Nさん‥「息子が一人前になるまで元気でいるために、頑張って安定した透析を続けることだな」
生きがい連結法により、自分なりの水分管理の目標を見出していくことができました。

リフレイミング

ある事実の解釈を変えるために、その人が持っている判断、認知過程の枠組み(frame)を修正するのがリフレイミングです。
私たちは、毎日の生活の中で直面する事実に対して様々な解釈を行なっています。その認知過程に偏りがあった場合、心理的な苦痛を感じたり、誤った対応を行なうことがあります。
リフレイミングとは、認知過程の偏りを修正することによって心理的な苦痛を取り除き、適切な対応、行動ができるように改善する方法です。

【透析患者へのリフレイミング】


数回の水分管理失敗に対する認知過程の偏り
いつもできない。水分管理だけではなくて何もかもできない。
自分の人生、だめ続きだ……
このような認知過程を修正し、無力感などの状態から抜け出せるよう援助する

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