2)各技法について/事例2
 各技法について  ‥‥事例2
 
事例2紹介

【事例2】

 Nさんは、水分管理ができず、
「いやぁ、飲みに行くのは止められないんだよ。看護師さんは飲むなって簡単に言うけど、本人にしてみれば大変なんだよ。誰も我慢なんかできやしないよ。みんな水分管理をどうやってるんだ!」と開き直ります。
 さらに看護師に注意されると
「水分管理なんてやったところでどうなるんだ!」と激怒し、「早く死んだっていいんだよ!」という言葉も聞かれました。

「誰も我慢なんかできやしないよ。みんな水分管理をどうやっているんだ!」
‥‥‥‥‥
他の患者様の水分管理に関心を示す
    ピア・ラーニング法
「水分管理なんてやったところでどうなるんだ!」
‥‥‥‥‥
水分管理を行うことにメリットを感じていない
    行動強化法
「早く死んだっていいんだよ!」
‥‥‥‥‥
生きがいを見失い、投げやりな感情を抱いている
    生きがい連結法
    リフレイミング
  ピア・ラーニング法
 他の患者様の水分管理に対しての関心がうかがえることから、医療スタッフはまず、ピア・ラーニング法を用いた自己効力感の向上に取り組むことを計画します。
 ピア・ラーニング法には、自分と同じような立場で、自分と同じような行動変容の目標をもつ患者様から学ぶことにより“自分もできるのではないか”という自己効力感を高める効果があります。
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ピア(peer)= 仲間・同輩

Nさん
「あれ?…みんながんばってるんだ。
努力していないのは俺だけだったのか。水分管理、俺でもできるのかもしれないな。」

  行動強化法
 さらに、水分管理を行うことにメリットを感じていないことがうかがえるため、行動強化法の導入を計画します。行動強化法は、ある行動の直後に自分にとって好ましいことが起きると、同じ行動を繰り返し行うよう条件付けられるという行動療法の考え方に基づいています。
 患者様が水分管理などの目標となる行動を行って、うまくいった場合に自分に対する報酬(プレゼント)などが繰り返し得られると、次の行動目標が達成されやすくなり、そのことが行動を習慣化させることにつながります。
行動強化法
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 Nさんは“水分管理がうまくいった週には、自宅で趣味のカラオケをおもいきり歌う”というプレゼントを定め、歌うことを楽しみにしながら水分管理に取り組むようになりました。

  生きがい連結法 ‥活用事例
 また、Nさんは生きがいを見失い、人生に対し投げやりな感情を抱いていることがうかがえるため、生きがい連結法の導入を計画します。
 食事や水分管理を人生の目的にしている人は多くありません。そのため、その人の生きがいを食事や水分管理などの目標と関連づけると、患者様にとって重要な意味を帯びてくるのです。
生きがい連結法
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 Nさん場合、自分の経営する工場で働く25歳の息子さんがおり、まだ半人前だと考えてはいるものの、将来は工場を継いでもらいたいと考えていることがわかりました。
看護師‥「“息子さんが一人前になったら工場を継いでもらう”ことと“体重を増やさずに安定した透析を行う”ことはどのようにつながりますか?」
Nさん‥「息子が一人前になるまで元気でいるために、頑張って安定した透析を続けることだな」
生きがい連結法により、自分なりの水分管理の目標を見出していくことができました。

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  リフレイミング

 ある事実の解釈を変えるために、その人が持っている判断、認知過程の枠組み(frame)を修正するのがリフレイミングです。
 私たちは、毎日の生活の中で直面する事実に対して様々な解釈を行なっています。その認知過程に偏りがあった場合、心理的な苦痛を感じたり、誤った対応を行なうことがあります。
 リフレイミングとは、認知過程の偏りを修正することによって心理的な苦痛を取り除き、適切な対応、行動ができるように改善する方法です。

【透析患者へのリフレイミング】
例:数回の水分管理失敗に対する認知過程の偏り
「いつもできない。水分管理だけではなくて何もかもできない。
自分の人生、だめ続きだ…」
このような認知過程を修正し、無力感などの状態から抜け出せるよう援助する
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